「デフレ脱却宣言」をめぐって議論を呼んでいます。「デフレのあとに何がくるのか」を考えてみました。当然インフレであり、「金利上昇」が懸念されます。金利が上昇するということは、値打ちが下がるということです。金利1%(残存10年の場合)があがると、100円が94円となり、金利2%では100円が88円と、元本が目減りする、ということになります。
今後の数年間の投資環境を考えた時、「デフレからインフレ」への「発想の転換」を頭に入れておく必要があります。金利上昇が数年後には0.5%から0.6%の上昇になると予想されていますが、この発想はまだまだ「デフレ発想」の域を出でいません。これらの(0.5%~0.6%の金利上昇)10倍、すなわち、5%~6%のインフレになる、瞬間的には、10%のインフレを今後覚悟する必要があります。
「不況=デフレ」という考え方は、1991年~1994年の時代では正しかったかも知れませんが、現在の景気が、いざなぎ景気を抜くといわれ、企業は最高益を更新しています。不況はデフレが原因ではなく、何か別の要因があるのではないか、と考えざるをえません。
その要因とは、「100円ショップ」や「ユニクロ」で見るような、「中国産の安い輸入品が日本に入ってきた」からだと唱える人がいます。日本円の発想で見ますと、確かに中国の人件費は1万円/月(14.5円/元で換算)です。しかし、23年前のレート、1984年の140円/元で換算すれば、中国の人件費は約10万円ということになります。ここに為替レートの変化が大変重要であることが判ります。23年間で日本円で見ますと、10万円から1万円になったのです。
今後数年間(2008年北京オリンピック後)の変化を考えた時、現在「1ドル8元」の時代から「1ドル4元」の時代になると言われています。この1ドル4元のレートで、米国の貿易収支の赤字が解消されるレベルです。この「1ドル4元」になった時、日本は強烈な影響をうけます。「100円ショッブ」が「200円ショツプ」になります。日本では、モノの値段が急激に上がる時代がくるということになります。
「1ドル4元」になる時はいつなのかを考えてみます。現在中国は国内輸送コストが高コストになっています。湾岸地域から内陸地域に開発が移るにも、あまりにも輸送コストが高い状況です。この流通コストを引き下げるために、中国政府は社会インフラ、港・空港・高速道路・高速鉄道の基盤整備を必死になって進めています。
北京オリンピック(2008年)の後には、ほとんどの基盤整備がほぼ完成する予定です。ここからが、「魔法の小槌」をふる時なのです。すなわち、今精一杯世界銀行から、「1ドル=8元」で資金を借りまくり、北京オリンピック後の返済時期に、中国は「元の切り上げ」を行います。すなわち「1ドル=4元」を実施します。
もっと判りやすく説明しますと、社会基盤整備を実施するために、中国は世界銀行から1兆ドルを借りれば、国内で現在8兆元の資金を使うことが出来ます。そして北京オリンピック後、「元の切り上げ」を実施し、「1ドル=4元」にすれば、世界銀行への1兆ドルの返済は、4兆元と半分になります。
この中国のやり方を日本は非難できません。日本も昭和30年代、新幹線、東名高速道路の建設を東京オリンピックを目標に進めた事例とそっくりです。当時日本は、お金がありませんでしたから、その建設資金を世界銀行から大量に借り入れを起こしました。
その当時の為替レートは、もちろん、1ドル360円の時代です。そして、高度成長期に、世界銀行への返済をしました。その時のレートが1ドル180円です。世界銀行への借り入れ資金の返済は、半分ですんだことになります。中国はこの辺のプロセスをよく学習し、現在それをお手本通り実施しているにすぎない訳です。
同じやり方で、日本は1970年の万博開催を目標に、名神高速道路・阪神高速道路建設のため、同じ様に世界銀行から莫大な借金をしています。その当時の為替レートはやはり1ドル=360円でした。そして1992年からの返済時のレートは、1ドル=120円になっていました。実に1/3の額の返済で終わったことになります。この辺も中国はよくウォッチングしていて、北京オリンピックのあとは、上海万博です。
話をもとにもどしますと、ポスト・デフレのあとには、「除々にインフレ」が、「あきらかにインフレ」の時代になると述べました。「預貯金」だけでは対応できない時が、この数年後に必ずやってきます。
われわれ60才を越したものにとって、また年金生活者にとって、インフレとは一体どのようなものなのか、を考えてみる必要があります。インフレは、現役者にとっては、なんら問題はありません。すなわち、インフレ率と賃金上昇率とが一致するため、景気がよくなれば、賃金が上がります。しかしこのインフレに対応出来ないところが、そう年金生活者です。
先般もお話しましたように、現在日本は国と地方合わせて、1,000兆円の借金があります。日本国の一年間の税収は40~46兆円しかありません。消費税を現行5%から10%に引き上げても10兆円が、20兆円にしかなりません。増え続ける年金をはじめとする社会保障費の増加を、現況のシステムでは吸収しきれませんし、もちろん1,000兆円の国・地方の借金の返済は到底無理です。
こうなった時、その時の政府はどのような施策をとるのでしょうか。無策で、税収を現行のシステムのまま、年金などの社会保障費は増加トレンドのままでいけば、通貨の乱発になり、いわゆる「年金インフレ」が起こり、「円の暴落」につながります。
歴史は我々に多くのことを時として教えてくれることがあります。この「年金インフレ」とはどうゆうものなのかを指し示す好事例があります。「1991年7月のロシア」がまさにこの「年金インフレ」であり、「通貨の暴落」でした。
1991年ロシア共和国のエリツイン大統領は、為替レートを新しく、1ドル=125ルーブルに設定しました。当時日本は1ドル=125円でしたから、ほぼ1ルーブル=1円にあたります。そして1997年ルーブルの大暴落が起こります。原因は、無税金の共産主義時代から、税金徴収の共和国時代になっても、無税習慣から抜けきれず、計画通りに税収が入ってこなかったこと、といわれています。この辺り現状の日本とよく似ています。
1998年1月、ロシア政府は、デノミを実施します。1/1,000の貨幣単位の切り上げを行い、今まで1ドル=6,000ルーブルから、デノミで1ドル=6ルーブルにしますが、1998年8月ルーブルは暴落し、1ドル=30ルーブルになります。すなわちデノミ前のレートに直しますますと、実に1ドル=30,000ルーブルになったことになります。
このとき、約5%の人達、ユダヤ系ロシア人はこの通貨変動で大もうけをしました。ユダヤの投資法は、「世界の通貨分散」という考え方です。資産をドルで持っていたために、資産が保全されたことになり、今日のロシア財閥につながっていきます。
このように、今日本は大切な節目に差し掛かっています。「1991年のロシア」にならないためにも、自分自身の資産管理について、大いに研究し、来るべき変化に対応していかねばなりません。皆様のご意見をお聞かせ下さい。
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